鬼は虎、ニワトリは豚
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主人が留守のふむ吉宅に降り立った、ナゾの鶏。
しかし、彼についてはひとまず置いて、
彼の言い放った言葉こそ、
今回のキーフレーズなのです!
曰く、
主人が留守の間に、鶏が食い散らかす
ベトナム語では、
[留守] [主人], [鶏] [散らかす] [台所]
見てのとおり、
主人が家にいない間に、
飼っている鶏が餌をさがして台所をめちゃくちゃにする
という意味です。
これが転じて、
管理する存在がないと、皆好きにやって収集がつかなくなる
という解説が文献などでは定義としてよく載っています。
しかし、
人々の間で実際に使われる場合は、
上の者がいないと下の者は好き勝手自由にできる
のように、
抑制される側の人間から見てうれしい、
という視点が多いようです。
昔私が現地でホームステイしていた時のお話ですが、
家の主人が刑務所あがりのコワイ人で、
彼の留守中に奥さんが今回のフレーズをよく口にしていたのを覚えています。
今回は、
ふむ吉という煩わしい抑圧者の不在に際し、
思いきり羽根を伸ばして自由に過ごすマロンちゃんの心を、
降り立ったナゾのにわとりが代弁したのですね。
思えば日本語にも、
「鬼の居ぬ間に洗濯」という諺があります。
鬼のように怖くて、気を遣わねばならない人が外出している間に、
ゆっくりと羽根を伸ばしてくつろぐという意味です。
まさに今回のフレーズの意味とピタリと一致していますね。
ところで、
同じ使われ方で次のような言い方もあります。
[留守] [主人], [鶏] [つつく] [鍋] [海老]
さらに、
[留守] [主人], [鶏] [生える] [尾] [海老]
これらを見ると、
前者は意味が具体化しただけと言えますが、
後者は少し様子が違うようです。
その成長過程でまず尾羽が特徴的に伸び始めます。
これがエビの尾に似ていることから、
ベトナムではその時期のヒヨコを lú đuôi tôm と呼ぶことがあります。
( lú は「芽を出す」の意味)
少し異なる見方ながら、
主人のいない時にこそ文字通り「羽根を伸ばせる」という、
おもしろい表現ですね。
chúa は「皇帝・王」「神」のような意味を持つ少し古風な言い回しで、
もともと「主」を意味する chủ の訛った音でもあります。
現代では、
「主人」という意味では chủ の方が一般的で、
今回挙げたフレーズについても、
chúa を chủ としたパターンがよく見られます。
「主人」がどうあるべきかは様々な見解があるでしょうから、
マロンちゃんへの普段のふむ吉の振る舞いは不問にするとして、
上に立つ者はどうあってもこんな風に思われるものなのかもしれませんね。
最後に、
忘れてはなりません!
鶏が食い散らかすと言った張本人・・・
おめえがにわとりじゃねーか!!
てゆーか、飛んできたのか?
にわとりが、飛んできたのか!?
以上マロンちゃんの心の声でした。
(おわり)
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