ベトナム語の詞類一覧
日本語や英語とは違う文法分類の考え方
ベトナム語の単語は、名詞・動詞・形容詞といった大きな分類だけでは、その働きを十分に説明できないことがあります。ふむベトでは、日本人学習者が語順や使い方まで理解できるよう、単語が文中で果たす役割を「詞類」として細かく整理しています。
ベトナム語の「詞類」とは
日本語の学校文法では、単語を名詞・動詞・形容詞・助詞などの「品詞」に分類します。ベトナム語にも、これに相当するtừ loại(語の種類・品詞)という考え方があります。
ただし、日本語や英語の分類を、そのままベトナム語へ当てはめればよいわけではありません。
ベトナム語は、単語の形がほとんど変化しない言語です。そのため、語の形だけでは名詞なのか動詞なのか、あるいは別の働きをしているのか判断しにくいことがあります。
例えば、ある語が文によって動作を表したり、状態を表したり、名詞に近い位置で使われたりすることがあります。語の役割を判断するには、次の点を一緒に見る必要があります。
- 文のどこに置かれているか
- 前後にどのような語があるか
- 主語や目的語を取るか
- 名詞を説明しているか
- 会話の態度やニュアンスを加えているか
そこで、ふむベトでは一般的な品詞分類を基礎にしながら、辞書で実際の使い方を説明するための細かな分類を「詞類」と呼んでいます。
つまり、「品詞」という考え方を否定するのではなく、ベトナム語の語が文中でどのように働くかを、もう一段詳しく見るための分類です。
まず知っておきたい基本的な詞類
最初からすべての分類を覚える必要はありません。ベトナム語の文を読むときは、まず次の基本的な詞類を見分けられれば十分です。
| 詞類 | 主な働き | 例 |
|---|---|---|
| 名詞 | 人・物・場所・事柄などを表す | người、nhà、sách |
| 動詞 | 動作や変化などを表す | ăn、đi、học |
| 形容詞 | 性質や状態などを表す | đẹp、lớn、ngon |
| 代詞 | 人や物、場所などを指し示す | tôi、này、gì |
| 数詞・量詞 | 数、順序、量などを表す | một、hai、nhiều |
| 副詞 | 時間、程度、否定などの意味を加える | đã、đang、rất、không |
| 接続詞 | 語・句・文をつなぐ | và、nhưng、nếu |
| 語気詞 | 話し手の態度や会話のニュアンスを加える | ạ、nhé、à |
これらは日本語や英語にも似た分類がありますが、文中での使われ方は必ずしも同じではありません。
ふむベト辞書で使う詳しい詞類一覧
ふむベト辞書では、単語の使い方をより正確に記録するため、基本的な分類をさらに細かく分けています。
以下は、学習者が最初から暗記するための表ではありません。辞書で「この語が、ここではどのような働きをしているのか」を示すための分類表です。
| 詞類 | ふむベトでの整理 |
|---|---|
| 名詞 | 人・物・場所・事柄・概念などを表す語 |
| 動詞 | 動作、変化、行為などを表す語 |
| 形容詞 | 性質や状態などを表す語 |
| 名動詞 | 名詞的な性質と動詞的な働きを持つ語 |
| 形名詞 | 名詞的な性質と形容詞的な働きを持つ語 |
| 形動詞 | 動詞と形容詞の両方に近い働きを持つ語 |
| 類別詞 | 名詞を分類したり、数えたりするときに使う語 |
| 相対量詞 | 一定ではない相対的な量やまとまりを表す語 |
| 絶対量詞 | 重さ・長さ・容量など、定まった単位を表す語 |
| 人間単位名詞 | 人を数えたり、集団や立場を示したりする語 |
| 親族名詞 | 親族関係を表し、呼称としても使われる語 |
| 人称代詞 | 話し手・聞き手・第三者など、人を指す語 |
| 指示代詞 | 人・物・場所などを指し示す語 |
| 疑問代詞 | 人・物・場所・理由などを尋ねる語 |
| 前置詞 | 場所、方向、起点など、語や句の関係を示す語 |
| 接続詞 | 語・句・文をつなぎ、関係を示す語 |
| 基数詞 | 一、二、三などの数量を表す語 |
| 序数詞 | 一番目、二番目などの順序を表す語 |
| 約数詞 | おおよその数量を表す語 |
| 数量詞 | 複数、全体、多寡などの数量を表す語 |
| 副詞 | 動詞・形容詞・文などに時間、程度、否定などを加える語 |
| 助詞(強調詞) | 語や文の一部を取り立てたり、強調したりする語 |
| 助詞(語気詞) | 丁寧さ、確認、念押し、感情などを加える語 |
| 感嘆詞 | 呼びかけ、応答、驚きなどを表す語 |
| 表象詞 | 音、動き、状態などを感覚的に表す語 |
ベトナム語らしさが見える詞類
詳しい分類の中でも、日本人学習者が特に注目したいのが、類別詞、人称代詞・親族名詞、語気詞です。
類別詞――「何を数えるか」を示す語
ベトナム語では、物や動物などを数えるとき、数字と名詞の間に類別詞を置くことがあります。
hai con mèo
2匹の猫
ba cái ghế
3脚の椅子
một quyển sách
1冊の本
con、cái、quyểnは、どのような名詞を数えているのかを示しています。日本語の「匹」「個」「冊」に似ていますが、名詞との結びつき方や使われる範囲は完全には一致しません。
人称代詞・親族名詞――人間関係が言葉になる
ベトナム語では、日本語の「私」「あなた」に一対一で対応する語を選べばよいわけではありません。
tôi、mình、em、anh、chịなどから、年齢、立場、親しさ、場面に応じて呼び方を選びます。
さらに、ông、bà、cô、chúなど、本来は親族関係を示す語も、家族以外の相手を呼ぶときに広く使われます。
ベトナム語では、呼び方を選ぶこと自体が、相手との関係をどう捉えているかの表明になります。
語気詞――訳しにくいけれど、会話には欠かせない
ạ、nhé、à、ơiなどは、単独の日本語訳だけでは説明しにくい語です。
例えば、同じ内容でもạを加えることで丁寧さが生まれ、nhéを加えることで誘いかけや念押しのような柔らかさが生まれます。
Em cảm ơn anh ạ.
ありがとうございます。
Đi nhé.
行こうね/じゃあ行くね。
辞書的な意味だけでなく、話し手の気持ちや相手との距離まで含めて理解したい詞類です。
ひとつの単語に複数の詞類があることも
ふむベト辞書では、ひとつの単語を必ずひとつの分類へ押し込むことはしません。
例えばchàoは、「挨拶する」という動作を表す場合には動詞として捉えられます。
Tôi chào thầy giáo.
私は先生に挨拶します。
一方、会ったときの「こんにちは」や、別れ際の「さようなら」に近い挨拶として単独で使われる場合には、感嘆詞に近い働きをします。
Chào anh.
こんにちは。
大切なのは「chàoは動詞か、感嘆詞か」と一つに決めることではなく、その文や場面で、どのような働きをしているかを見ることです。
詞類を知ると語順が見えてくる
詞類は、単語へ名前を付けるためだけの分類ではありません。どの詞類に属するかが分かると、その語を文のどこに置けばよいか考えやすくなります。
- 動詞の後ろには目的語が置かれる
- 形容詞は基本的に名詞の後ろに置かれる
- 類別詞は数詞と名詞の間に置かれる
- 人称代詞は話し手や聞き手などの位置に入る
- 語気詞は文末などに置かれ、会話のニュアンスを加える
単語の意味と詞類、そして語順を一緒に見ることで、丸暗記ではなく、ベトナム語の文がどのように組み立てられているかが見えてきます。
まとめ
ベトナム語にも、名詞・動詞・形容詞などの品詞に相当する分類があります。ただし、語の形がほとんど変化しないため、形だけを見て役割を判断することはできません。
ふむベトでは、次の点を重視して詞類を整理しています。
- 文中のどこに置かれているか
- 前後の語とどのように結びつくか
- その場面でどのような意味を表すか
- 話し手と聞き手の関係にどう作用するか
- 同じ語が別の働きをすることがあるか
詞類名をすべて暗記することが目的ではありません。単語が実際の文の中でどのように働いているかを見るための案内図として活用してください。
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