かまどの神様の移動、いや、飛行手段はコイ!

ふむにちわ!
ふむベトのゾースケです。

2015年2月17日、旧暦では12月29日の今日は、
旧暦の大みそかの前の日です。
ご存じ、ベトナムの旧正月はテト(Tết)といいます。
(正確には、Tết Nguyên Đán といいます)
大みそかの前日である今日はもう、大掃除をしたり、買い溜めをしたりという、
慌ただしいテト前の準備が一段落しています。

ああ、もうテトを迎えるだけ・・・。

と、その前に!

テトにまぎれてわかりにくいイベントが、
数日前にあったことをとっても忘れがち!

そのイベントとは・・・

「かまどの神様」の天昇り!

毎年旧暦の12月23日(2015年は新暦の2月11日)、
かまどの神様は天に昇り、
一年間の、良いことも悪いことも、
家にあったすべてのできごとを天の神様に報告します。

かまどの神様は形態変化の魔法を得意とする神様で、
天に昇るときにはかまどの灰を翼に変えて、
炎をジェット噴射するというのはすべてウソです。

かまどの神様の移動手段。
それは、コイ!
そう、魚のコイなのです!

なぜ、コイなのか?

uiaheffe 至る所で売られるコイ。本当にコイなのか?

なぜ空を飛べる鳥のような動物ではなく、コイなのか。
その理由は諸説あり、
ひとつには、中国の故事「登竜門」、
龍門という急な流れを昇りきったコイは龍になるという話に由来し、
コイがベトナムでは成功を見据えたありがたい生き物だというもの。
ひとつには、ベトナムの神話、
むかし天に住んでいた金のコイが罪を犯し、
天の神に天から落とされ、修行の末に龍になって天に還ったというもの。

いずれにしても、コイは龍になれるのです。
龍ですから、そりゃまあ、
かまどの神様をのせて飛べるんだろうなー。

かまどの神様は三人!?

かまどの神様の伝説は中国の故事に由来しています。
簡単にご紹介すると・・・

昔むかしあるところに、愛し合う夫婦がいました。 しかしケンカして別れてしまいました。 元妻は新たに人を見つけ一緒になりました。 夫が留守の際に元夫がたまたま家を訪れます。 偶然の再開にふたりは大興奮! そこへ夫が帰宅します。 あわてた妻は元夫をかまどの中に隠します。 何も知らない現夫はかまどに火をつける! あつい!と言って今飛び出したら、元妻に迷惑がかかってしまう! そう思って元夫はかまどの中で焼け死ぬ覚悟。 心震えた元妻は元夫を追ってかまどへダイブ! 妻が死んでしまう! 夫も妻の後を追ってかまどへダイブ! 愛ゆえに三人はかまどの中で死んでしまったのです。

三人の愛に感動した天の神は、三人をかまどの神にしたのだとさ。

ĐẤT LỀ QUÊ THÓI, Nhất Thanh, 1970

というわけで、
かまどの神様は元夫と夫と妻の三人いるのだそうです。

でも、三人それぞれ呼び表すのもめんどくさい!
からかどうかは定かではありませんが、
人々はこの三人をまとめてかまどの神様と呼んでいます。
かまどを表す Táo(漢字では「灶」or「竈」)に、
「君子」の「君」をつけて Táo Quân
「王」をつけて Táo Vương
先祖や神様の人称代詞を前置して Ông Táo などと呼んでいます。

旧暦12月23日はどこもかしこも煙たい日

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これはかまどの神様が着る装束です。
うさぎの耳のような飾りがついたぼうしと、くつ。
これがかまどの神様の人数分だけ、そう、三人分あります。

でも、神様の装束の割に、
紙製だし、けっこう安っぽいですよね。

しかしこれには理由があります!

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そう、燃やすのです!

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こちらはくつ。

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いってらっしゃい、かまどの神様。

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向こうで困らないようにと、
お金もいっしょに燃やします。
もちろん偽物のお金です。
ドルまであります。

居候先のお母さんいわく、 かまどの神様が早く天に昇れるようにと、
紙製のバイクやクルマを燃やす場合もあるそうです。
冷蔵庫や洗濯機も燃やすとか。
もう、本来の目的はどこへやら。

そして、本来バイクやクルマはテトの時に燃やすものと聞いたこともあります。
お母さん、かなりテキトーです。

写真を撮り忘れてしまいましたが、
これらもろもろの「燃やすもの」は、
燃やす前に家の中の神棚にお供えします。

神様装束三点セットには紙製のコイがついていることもあります。
コイもいっしょに燃やして天に送りだせば手っ取り早い。

しかし、ひとびとはコイと呼ばれる金魚のような魚を購入し、
池や川に放します。

一昔前までは、装束を燃やした灰も、
コイと一緒に池や川に流していたようですが、
最近では環境保全の声が高まりあまり見られなくなっているそうです。
とはいっても、家々の軒先でいっせいに煙があがるので、
街はいたるところで煙でまっ白になります。

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燃やしたあとは酒をかけて火を消します。
しかし、居候先のお母さんは水でした。
いわく、めんどくさい&もったいないから。

本来は正午までに燃やさないとかまどの神様が間に合わないそうですが、
この時はすでに午後1時でした。
いわく、そんなの関係ない!

いわく、紙製のバイクや車も、テトのときにも燃やすわよ、
今日も燃やすの!いつでもいいの!

いくら神様がいたって、
今を生きる人のいいように、
ストーリーは変わっていくようです。

大みそかに、帰還します!

この日天に昇ったかまどの神様は、
テトを子孫たちと一緒に祝うために帰ってくる先祖たちに合わせるように、
旧正月テトの大みそかにまた地上へ戻ってくるそうです。
冒頭にも書いたとおり、大みそかは明日です。
かまどの神様は明日、戻ってきます。

きっと、コイから成ったありがたい龍にのって戻ってくるのでしょうから、
新しい一年もきっと、ありがたいものであるはずです。

(おわり)

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