たまたま出会った焼いかに心が震えた!

ふむにちわ!
ふむベト編集部のゾースケです。

近頃日本は本格的に寒くなってきました。
ぼくの地元瀬戸内の沖合の漁場では、
寒さのあまりにいかがイカって夕焼け時に海面を飛び跳ね、
遠くからみるとキラキラと煌めいて、それはそれは美しい光景です。
冗談です。冗談だふむ!

しかし、
夕焼けの景色が美しいのは本当です。
キラキラと煌めくのも、本当です。
みなさま、ぜひ瀬戸内海を訪れてみてください。

さて!

イカといえばするめや塩辛など、おつまみの代表選手ですね。
つい先日ぼくは、
特にイカを食べたいと思っていたわけではないのにも関わらず、
衝動的におつまみの焼きいかを買ってしまったのです。

購入したのは、これ。

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なぜ衝動的に焼いかを買ってしまったか!?

その理由を、ご覧にいれましょう!

ぐぐっ・・・
(ズーム音です)

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ぐぐぐっ・・・

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ぐぐぐぐっ!!

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いしる(魚醤油)!

魚醤です!
なんと、魚醤仕立ての焼いかなのです!

こう書かれてあってはもう、
ベトナムの魚醤、ヌックマム好きであるぼくの、
ベトナムの国民的調味料、ヌックマム好きであるぼくの、
人生最大の後悔になりかねないじゃあありませんか!

そして「いしる」とは、
詳解!黄金のしずくヌックマムでもご紹介しているとおり、
日本三大魚醤と呼ばれる三つの魚醤のうちのひとつ、
石川県は能登半島に伝わる伝統的な魚醤なのです。
日本とベトナムの、魚醤という共通点!

というわけで、
素敵な売り文句をまとったイカのおつまみを衝動的に手にとり、
晩酌のお供にと、ワクワクしながら購入に至ったというわけです。

さて、家で早速食べてみます。

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ぱくっ
う・・・うううましっ!!

美味しい。
ただただ、オイシイ!

このときすでに、
ウイスキーでほぼ出来上がっていたぼくなので、
「いか」というだけでしあわせなおつまみだったのかもしれません。
しかし、ほろ酔い気分の記憶の中に、
おそらく普通の焼いかでは得難いであろう、
舌にずっしりとくる濃厚な旨みが確かに残っているのです!
魚醤独特の、”重量感”のある旨みが・・・。

そして、
ここぞとばかりにヌックマム好きによくあるあの行動を、
この時もやってしまったわけであります・・・。

すでに完成されているものに、
しかもベトナムなんて関係ないものに、
どうしてもヌックマムをあわせてみたくなる。

というわけで、早速。

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ほろ酔いヌックマム好きにも辛うじて理性というものが残っており、
家にあった「いしる」と、
ご存じ秋田の魚醤「しょっつる」にも登場してもらうことに。

写真左から、
石川のいしる、
フーコックのヌックマム、
秋田のしょっつるです。

意図したわけではありませんが、
きれいなグラデーションになっています。

それぞれの原材料は、
いしるが「いわし」、
ヌックマムが「かたくちいわし」、
しょっつるが「ハタハタ」です。

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ただしご覧のとおり、
これはパッケージ表記にあるとおりなので、
いしるの「いわし」には「かたくちいわし」が含まれるのかもしれません。
しょっつるに関しては、ハタハタ100パーセントです。

説明はこれくらいにして、実際に食べてみましょう!

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つけます。

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つけます。

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つけます。

食べます!

ぱくぱくぱく!!

う・・・うううましっ!!
でも、ちょっと濃いかも!

えー、
焼いかを茶色い液体につけて食べるという行為が、
これほどまでにクローズアップされたのは古今未曾有のできごとでしょう。

しかし、
ちょっと濃いかもという率直な感想のかたわらに、
魚醤仕立てなだけあって、魚醤につけても違和感なし!
という実感が、堂々と肩を並べているのです!

特に驚くべきことは、
同じニシン目のいわし類を原料とするいしるとヌックマムについて、
ほとんど味の別が分からないということなのです!
原材料もそうですが、
魚と塩を混ぜたものを天日で長期間さらすという製造工程も共通しているので、
当たり前といえば当たり前。
しかし、
互いに遠く離れたベトナムと日本に、
これほどまでに相似する調味料があることは、
大きな驚きであり、心動かされる事実です。

ああ、
しあわせな時間だった。

今宵は日越をつなぐ味の架け橋の上で、
ゆっくり眠ることにしよう。

ふむやすみ・・・。

とはいかなかったのであります!!

ほろ酔いの脳ミソの片隅から、
「いしる」のついてのキーワードが、
渦を巻くように立ち昇ります。

いしる・・・
日本・・・
魚醤・・・
能登半島・・・
いわし・・・
いか・・・
いか・・・ イカ!!!

そうなんです。
いしるには他でもない、イカが原材料のものもあったはず!
おぼろげなぼくの知識でしたので、
この際きちんといしるについて調べてみないことには眠れない!
いや、一晩しっかり寝て、
正気に戻ってから調べようかしら。。

というわけで一夜明け調査してみたところ、

石川県の能登半島では、古くからいかや魚を原料とした「魚醤油」づくりが行われてきました。

能登の魚醤油(うおしょうゆ)いしり物語

とあり、

能登の魚醤には大きく2種類あります。一つは、主に富山湾に面した内浦地区でつくられる真イカの内臓を使った「いしり」、もう一つは日本海側の外浦に面した地区に伝わり、いわしやサバなどを主な原料とする「いしる」です。

能登の魚醤油(うおしょうゆ)いしり物語

とあるではありませんか!

さらに、

魚醤油といえば、世界的にはタイのナンプラーやベトナムのニョクナムが有名ですが、国内でも秋田県の「しょっつる」や、香川県の「いかなご醤油」などがあります。いずれも魚を原材料にしています。能登半島の「いしり」は、その中でも生産量で日本一を誇っています。

能登の魚醤油(うおしょうゆ)いしり物語

!!

なんと、
「いしる」は日本の三大魚醤の中で生産量が一位なんですね!
ということは、押しも押されぬ日本の魚醤代表選手ということです!
三つしかないじゃない!なんて言わないで!

そして、
ほろ酔いで床についたあたりからひとつの命題が、
ぼくの頭を支配していたのです。

おれが喰った焼いかは「いしる」仕立てというけれど、
その「いしる」はイカの「いしる」なんじゃあねぇのかい。

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「魚醤」か・・・。

む~ん、考えてみましょう。

「いしる」には二種類あり、
イカを原料にした「いしり」と、
いわしやさばが原料の「いしる」がある。

ということは、
焼いかのいしるはいわしやさばのいしるなのか?
でも、魚っぽい風味はしなかった気がする・・・。

魚か、イカか。

・・・わからーん!!

そうだとも!聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥!
そうれ、製造元に聞いてしまえばいい!

ということで、「がんこ漁師の焼いか」の製造元である、
舳倉屋(へぐらや)さまにインタビューをさせてもらったところ、
快く受け答えをしていただきました。
(以下、「舳」は舳倉屋さま、敬称略)

私:がんこ漁師の焼いかのいしるは、イカですか!?

舳:焼いかですから、イカですよ。

私:イカなんですね!!

舳:いかですから、イカですよ!

私:いかにイカなんて、イカしてますね~

舳:イカはいかの旨みをぐーんと引き出します!
  いかにはイカが、いいんですよ!

私:はっきりわかってイカったです!!

(実際はすごく丁寧に答えていただきました)

そう言われると、当たり前なのかもしれませんが、
魚醤=魚が原料という先入観があるので、
イカのものかもしれないとはすぐに思いませんでした。

もちろん、舳倉屋さんへのインタビューは、
イカという単語をひたすら言い合っただけではございません。

次の写真をご覧ください!

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どちらが日本で、どちらがベトナムかおわかりでしょうか?

いいえ、どちらも日本なのです!!

ぜひ製造環境を知りたいと舳倉屋さんにお願いしたところ、
お写真をご提供くださいました。
二枚とも、実際に舳倉屋さんで製造されている様子の写真です。

ちなみに、ベトナムはこちら。

cach_lam_nuoc_mam © YeuDulich

舳倉屋さんでは、いかやいわしなどの魚介を塩と合わせ、約一年天日に置くそうです。
ヌックマムと、まったく同じなのです!おどろきです!
太古の昔に中国にあったとされる魚醤や肉醤の食文化が周囲の国々へ伝わって
そこで根を下ろしたのか、
はたまたどちらかにあったものがどちらかへ伝わったのか、
いずれにしてもきっとルーツは同じなんだろうなと強く思ってしまうほど、
風味や製法に多くの共通点があるのです。

共通点があるということは、すなわち分かり合えるということ。
簡単に思いつくところでは、
想像したくないことですが海洋汚染などで原材料がとれず生産不可になったとき、
日本のいしるがベトナム人の、
ベトナムのヌックマムが日本人の、
食への想いを満たせるのかもしれませんね。

さて!
イカイカと言ってまいりましたので、
イカのいしるを味わわないわけにはいきません!

こちらが舳倉屋さんのイカのいしるです!

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魚醤が苦手な方はほとんどが魚の発酵した強烈なにおいが理由かと思いますが、
このイカのいしるはずばりイカのにおい、
するめのにおいを何十倍にもしたようなイカのにおいです。
ぼくのようにヌックマムに慣れてしまった身では、
客観的な判断ができないのかもしれませんが、
ヌックマムが苦手な方でも「魚」じゃなくて「するめ」のにおいと言われれば、
特に臭くないよなぁという具合の、そんなにおいです。

そして、味は・・・

ズバリ、濃いするめ!

そう、これはもはや、濃いするめです。
よく商品コピーなんかで「うま味が凝縮された」と言いますが、
まさにイカのうま味がぎゅうぎゅう詰め!
と言える味です。

そして何よりも驚きなのは、
いわしなどの魚を原料とする魚醤は鼻にツンとくるにおいがあるので、
日本人が原液そのままを味わうのはなかなかの冒険であることに対し、
このイカのいしるは、
原液をそのまま、ペロペロと舐められるような仕上がりになっています。
魚臭くなく、味も濃厚するめといったところなので、
液体なのに美味しいするめを食べているような、
不思議な感覚を味わえます。

ぼくはヌックマムを醤油の代替としてよく使うのですが、
今回はこのイカのいしるで、
ブタのしょうが焼きを作ってみました。

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イカのいしるおそるべし!
しょうが焼きがうまーい!!

(この感じ、何度もすみません)

普段はしょうゆと酒とみりんを1:1:1の割合で作るのですが、
今回はしょうゆといしると酒とみりん1:2:3:3で作りました。
ごはんが非常に進みます。びっくりするほど、進みます。
ヌックマムを使うときは比較的少しずつ使うのですが、
こちらのイカのいしるは思い切っていれても上手くいく場合が多いのではと思います。

イカのいしる、素敵な食品に出会えました。
これからいろいろな献立に試してみようと思います!

そしてなにより、
突然のインタビューに快く応じてくださった舳倉屋さん。
どうもありがとうございました!
これからも日本発の美味しい「いしる」を作り続けてほしいと、期待しています。
そして、ぼくとしては、 ベトナム人の方にもぜひ試してみてほしい。
イカのいしる、 ! です!
日本人の方には魚醤の可能性をもう一度考えてみてほしい。

いしる、しょっつる、イカナゴ醤油。
彼らの「うま味」は、すごいんだふむ!

↓↓↓ 舳倉屋さんの情報はこちらからどうぞ ↓↓↓

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舳倉屋 へぐらや
石川県輪島市稲船町482

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