テト休みの一週間、テトを食べ尽くす一週間 ~大みそか編~

ふむにちわ!
ふむベトのゾースケです。

ふむベトはぼく個人で運営しているため、
本来ならぼくはいち編集者であると同時にひとり編集長なのですが、
旧正月テト(Tết)を密着取材したこの数日間、
居候先のお母さんにくっついてテトテトテトテトと走り回った結果、
なんだかお母さんが編集長でぼくはただのヒラになったような気分です。

さて!
2月23日(旧暦1月5日)をもって、
2015年の旧正月テトは終わりをむかえました。
まるはだか!ベトナム旧正月テトの準備あれこれ。では、
テト前のいろいろな準備をご紹介しました。
大みそかに書いた記事ですから、
記事を公開した直後からテトは本番に突入したわけです。
今回はそのテト突入直後、
大みそかの夜の様子をお伝えします!

お供えをして、家族で晩ごはん

晩ごはんをお供え

大みそかの夜、テトの準備はもちろん万端。
お母さんは晩ごはんをお盆にそろえ、
神棚の前においてお供えをし、祈りをささげます。

お祈りの対象は、
一年間お世話になったゆく年の年神様。
一年の感謝の気持ちを、年神様に伝えます。
いつもはひょうきんなだけのお母さんも、
この時ばかりはと、とっても真剣な表情です。

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すでに万端であった神棚に大みそかの晩ごはんが加わり、
テトのお供えは完成をみたようです。
写真右下の偽札と年神様の衣装。
これらも本来なら神棚の上に置きます。
でもわが家の神棚はもう場所がない。
ひっかけておくだけでもいいの!
と、お母さん。

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晩ごはんのお供えを終え、食事の時間。
大みそかの晩ごはんは特別です。
元日からは親戚まわりがはじまるのとは対照的に、
この日の晩ごはんはいつも一緒にいる家族で食べます。
お母さんと、娘三人と、ぼくと。
ぼくが余計なようですが、
ちょうど「工作」にいっているお父さんのかわりだ、と。
お母さん、たまにニクいことを言ってくれます。

ちなみにベトナム語で大みそかは giao thừa といい、
漢字に直すと「交承」です。
古い年と新しい年が交わるという意味合いがあるそうです。

お母さんの粋なひとことで、
異邦人がむりやり家族に交わろうとしている色の濃かった食卓は見事に、
年の交わりを迎えるだけの家族の食卓になった気がしました。
なにはともあれ、大みそかの晩ごはんは、
家族で一年を終わり一年を迎える大切なものなのです。

年が交わる時まで、しばし

晩ごはんがおわると、20歳の長女と18歳の次女は、
ハノイのあちらこちらで上がる花火を見にいきました。

ぼくとお母さんと7歳の三女は横になり、
年が交わるその瞬間までひと休み。

花火こそ、追っかけるべき大イベントなんじゃあないの!?

ふっふっふ。
その心配には及びません。
ご覧ください!

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ベトナム版、紅白歌合戦。
しかし、これを見ずして花火なんて見れようか!
というのは半分うそで半分ほんとう。
そのわけは後ほど明かすとして、
今は歌合戦で年末気分に浸ります。

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歌を初聞で理解するのはむずかしい。
年末っぽい興奮もほどほどに、眠くなってきます。
と、気づけば三女はすでに夢の中!
「11時半に起こして」と、お母さんまで。
ベトナム国旗が躍るブラウン管を前に、
その時まで必死で飽きと眠気をこらえます。

11時半だよ、全員集合!

歌合戦がおわり、その時が来ます。
眠りを邪魔された編集長は何か文句を口にしながらも、
年が交わる時を前してか興奮気味に、ヒラに指示を出します。

きんかん!ザボン!
米と塩!おこわ!
冷蔵庫のにわとり!
年神様の衣装!
全部お盆にのせて玄関先に置いて!
にわとりに花をくわえさせて!

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編集長とヒラの連携の成果が・・・。

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今まさに玄関先に!!

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お母さんの指示のまま、もう解説はいりませんね。
年が交わる前に家々が玄関先に出す供え物。
Bánh chưng というちまきを冷蔵庫の中に忘れたままでしたが、
今回の供え物は必要なものを揃えた、もっともシンプルな姿と言えます。
ほかに、年神様の位牌や、紙製の馬、
タバコやお酒など、お供え物の種類は様々です。

準備ができたら、年の交わりを待つのみです。

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ちなみに、にわとりにくわえさせたのはピンクのバラ。
ピンク色には幸運の意味合いがあるそうです。
くわえさせられた彼(雄鶏)は、幸運だったのかしら。

除夜の鐘ならぬ、年明け花火ならぬ、アレ。

年が明けると、
日本では除夜の鐘を鳴らします。
ベトナムでは各地名所で花火が上がります。
1995年に禁止されるまでは、爆竹を鳴らしていました。
賑やかな爆竹の音を聴けないなんて、さみしい。。

おっと、それは早計!

花火を見に行かずにこの瞬間を待ったわけが、いま明かされます!
いざ、ハッピーニューイヤー!!

ご覧のとおり、いえ、お聴きのとおり、
爆竹はまだ鳴るのです!
禁止されているはずなのに!

ここいらの自治体の公安が黙認すれば、鳴るでしょ、そんなの。
お母さんは当たり前のように言いました。

王の法は村の掟に負ける。
Phép vua thua lệ làng.

まさに、このことわざのとおりです。

さようなら、そして、こんにちは

年が明け、爆竹が鳴りやみ、あたりは静寂に包まれます。
この後の大切な儀式を迎えるような、そんな静けさです。

大切な儀式、それは、年神様の交替。

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一年間の想いを込めて、年神様を送り出します。
燃やしたら着られないじゃないなどと、
野暮なことを言ってはいけません。
ゆく年の年神様は衣装をまとい天に帰り、
来る年の年神様は衣装をまとい地上に降りてきます。

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正確には、年神様の衣装は二部用意しなければなりません。
今回わが家は一部だけだったので、
行く神様と来る神様のどちらかは裸なのかと聞いたところ、
お母さんは腹を抱えて涙がでるまで笑っていました。
でも、行くのと来るのとで、二部必要なのは確かなことなのです。
つまり、一部しかなかったわが家では、
行った年神様か来た年神様のどちらかが裸なのです。
とお母さんに問い詰めたところ、
今度は咳き込むまで笑い転げていました。
おおよそ、細かいところはどうでもいいのでしょう。

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ちなみに、年神様は「行譴」と呼ばれ、全部で12柱おられます。
その12柱の年神様には、
年神様を補助する判官さんがそれぞれついています。
年神様も判官さんのお名前そのほかについては機会を改めて詳しくご紹介するとして、
年神様に加え判官がいるということは、ますます衣装が足りませんね。
そこまで聞くと怒られそうだったので尋ねませんでしたが、
もし四人のうちふたりが裸であるとしたら、きっとそれは判官たちでしょう。

新しい年がやってきた!

旧暦の大みそかを終え、
ベトナムには本当の新年がやってきます。

お酒をかけるべきところ水をかけて灰を消していたお母さんの携帯電話が、
友人からの新年のメールを受信しました。

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古い年がゆき、新しい年が来ました。
わたしのもっとも愛する人たちに、
家族に、同僚に、友人たちに、
新年を祝うこの言葉を送ります。
「安らかで健康でありますように
 繁昌し成功を得られますように
 すべては意のままに
 すべては夢のままに」

AN KHANG は「安康」、
THỊNH VƯỢNG は「盛旺」、
MỖI SỰ NHƯ Ý は「毎事如意」、
VẠN SỰ NHƯ MƠ は「萬事如夢」のように、
それぞれ漢字をあてることができます。
テトの飾りや街中の看板など、
いたるところで見ることができる言葉です。
※MƠ だけは漢字をあてられませんが、「夢」という意味です。

新しい年に、願いを込めて。

Chúc Mừng Năm Mới!
あけまして、おめでとう!

(おわり)

— 後記 —
この後そのまま初もうでにいく予定でしたが、
この日はお母さんもぼくも疲れていたので翌朝いくことになりました。
初もうでの模様は次回をおたのしみに!

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