Vietnam Foodspedia
Anchovies
カーコム(カタクチイワシ類)
銀色の小魚が、煮魚にも魚醤にも。ベトナムの食卓を支えるカタクチイワシ類。
Stolephorus tri(cá cơm sọc tiêu に対応する代表例)Encrasicholina punctifer(cá cơm đỏ に対応する代表例)Stolephorus commersonnii(cá cơm thường に対応する代表例)Encrasicholina heteroloba(ベトナムで cá cơm / cá cơm mõm nhọn と呼ばれる代表例)
カタクチイワシ類(ベトナムの cá cơm に相当する複数種の総称。日本の標準和名「カタクチイワシ」1種とは異なる。)
Anchovies(複数種を指す英語の総称。)
Cá cơm(複数の小型魚を指す総称。)Cá cơm phấn chìCá cơm sọc tiêu(Stolephorus tri に対応する呼び名。)Cá cơm đỏ(Encrasicholina punctifer に対応する呼び名。)Cá cơm than
どんな食材?
Cá cơm は、ベトナムの沿岸で獲れる小型のカタクチイワシ科の魚をまとめた呼び名。細長い体の側面が銀色に光り、群れを作って泳ぐ。種類によって姿は少しずつ異なり、指ほどの長さの小さなものもいる。名前の cá は「魚」、cơm は「炊いた米・ご飯」を意味する。
小さく白っぽい魚が網いっぱいに重なる姿をご飯粒に見立てた、あるいは海辺の暮らしで毎日のご飯のように身近だったことから、この名がついたという説がある。
名前には、後に阮朝の初代皇帝・嘉隆帝となる Nguyễn Ánh(グエン・アイン)にまつわる伝承も残る。西山朝(タイソン朝)の軍に追われ、食料を失った一行の前に小魚の大群が現れ、兵たちはそれを食べて飢えをしのいだ。ご飯の代わりに命をつないだ魚として、cá cơm と呼ばれるようになったという物語。小さな魚と日々の食事との結びつきが、呼び名の中にも息づいている。
ベトナムでの使われ方
cá cơm の大切な用途の一つが、ベトナムの食卓に欠かせない魚醤・ヌックマムの原料。獲れた魚を塩と合わせ、時間をかけて発酵・熟成させる。南部のフーコック島(Phú Quốc)では、cá cơm sọc tiêu や cá cơm than などが伝統的なヌックマムづくりに使われる。小さな魚が、料理に塩味とうま味を添える調味料へと姿を変える。
生鮮の cá cơm は、煮付けや揚げ物、汁物にも使う。胡椒、ニンニク、ヌックマムなどで甘辛く煮る cá cơm kho tiêu は、ご飯によく合う一皿。ベトナム中部の沿岸には、酸味をきかせた canh chua cá cơm(カタクチイワシ類の酸っぱいスープ)もある。
新鮮な魚を使い、頭と骨を除いてレモン汁で締め、香草、玉ネギ、炒りピーナッツと和える gỏi cá cơm という料理もある。ライスペーパーで包み、唐辛子やニンニク入りのたれにつける、沿岸の家庭に伝わる食べ方。漁獲した魚は乾燥させて保存食にもする。
見分け方
画像には、cá cơm の呼び名のうち4タイプを上から順に描いている。それぞれの外見と呼び名には次のような特徴がある。
- 上から1匹目・cá cơm phấn chì:淡い銀色の体側が目立つ姿。
- 2匹目・cá cơm sọc tiêu:体の側面に細い帯が走る姿。sọc は「縞」、tiêu は「胡椒」を意味する。
- 3匹目・cá cơm đỏ:腹側に赤みを帯びた姿。đỏ は「赤」を意味する。
- 4匹目・cá cơm than:暗い背と銀白色の側面の対比が目につく姿。than は「炭」を意味する。
この4タイプのほかにも、cá cơm sọc phấn、cá cơm lép、cá cơm thường などの呼び名がある。



